堀晃「バビロニア・ウェーブ」
はじめて読む堀晃作品は第二十回星雲賞の日本長編部門を受賞した「バビロニア・ウェーブ」。
星雲賞受賞作を読むのは、日本長編部門のなかではこれが二作目(一作目は野尻抱介「太陽の簒奪者」)だったりする。星雲賞は海外作品やコミックだと、それなりに有名な作品は読んでいるのだが、国内作品は意外にすくない。
人類の主要なエネルギー供給源となっている巨大なレーザー光束——バビロニア・ウェーブ。この莫大なエネルギー源の謎が物語のテーマになっているのだが、個人的には、
- 有り余るエネルギーを手にした文明がどうなるか
- エネルギー事情が一変したことにより、破棄されたコロニー
- コロニーの、回転する重力場で育った主人公マキタの特性
といったものに興味をそそられたし、小説内でもわりかし多くの紙面を割かれているように思う。
ただ、最終的に、これらの要素が脇道としてしか感じられなかったのは残念だ。バビロニア・ウェーブの謎も単体では求心力に乏しく、このへんや一癖ある登場人物たちがうまく絡んでいけば傑作になった気もするんだが…。
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